2014年1月13日

国立最蹴章に相応しい名勝負



国立行ってきました。




富山第一32星稜


東京五輪に向けた改修工事に入るため、
しばらく見納めになる国立での選手権決勝。

何年か後に、建て替え工事が終わった国立競技場で、
再び選手権の決勝が行われる時まで語り継がれそうな、
人々の記憶に深く残る試合だったね。



試合は、序盤から富山第一が押し込む展開。

バリエーション豊富なセットプレーと、
攻守の切り替えの早いショートカウンターで星稜ゴールを脅かせば、
もはやお馴染みとなった、均衡のとれた2ラインが、
星稜のパス回しを完全に封じ込めていた。

ただ、大塚のスルーパスに抜け出した野沢が、
GKと1対1になる決定的な場面があったものの、
富山第一としては、この時間帯に先制点を奪えなかった事が、
その後の試合展開を苦しいものにしてしまったね。

一方、苦しい時間帯を凌ぎ切った星稜は、
前半33分にペナルティエリア内の混戦でPKを獲得すると、
これを寺村が決めて星稜が先制し、前半はそのまま星稜リードで折り返した。



後半に入ると、富山第一の2ラインが間延びし始め、
中盤にスペースが生まれたことで、星稜がボールを持つ時間が長くなり、
徐々に富山第一が押し込まれ始めた。

そんな展開が続いたところに生まれた星稜の2点目。

後半の試合展開、今大会これまで無失点の星稜守備陣の事を考えると、
試合の大勢は決まったかに思えたね。

ところが、大方の予想に反して、ここから富山第一は息を吹き返した。

その反撃の立役者となったのが、左SBの竹澤。

後半42分に1点を返した高浪のゴールも、
カウンターから、竹澤が精度の高いフィードを前線に送ったのが起点だったし、
土壇場での大塚の同点PKも、ファウルを貰ったのは竹澤だった。

準々決勝の日章学園戦から3試合、竹澤を見てきて、
SBの基本で動作である、精力的なアップダウンだけでなく、
ボールも捌けるし、自分で仕掛ける事もできるし、
おまけにフィードの精度も高く、とても良い選手だなと思ってたけど、
この大舞台で、あれだけのパフォーマンスができるなんて大したもの。

プロとしてやっていくには体が小さいかなと思うけど、
高校サッカーまでで終わって欲しくない才能のある選手やと思うわ。



そして、試合は2-2のまま延長戦に突入。

星稜としては、延長に持ち込まれた格好になってしまったけど、
藤井のロングシュートがクロスバーを叩くなど、
まだ牙は抜かれてないなと観客に思わせたね。

しかし、両校とも決め手を欠き、誰もがPK戦突入かと思っていたところに、
次の1点が生まれたのは富山第一。

城山のロングスローが抜けてきたところに待っていた村井が、
ショートバウンドをボレーで合わせて、豪快にゴールネットを揺らし、
富山第一が延長に入って2点ビハインドをひっくり返すことに成功。

城山がロングスローを投げたのは人生初だったらしいし、
村井のシュートも普通の高校生だったらフカすような場面だった。

こんな、普段の実力以上のプレーができるのが、
国立の持つ力なのかもしれないなと思わせられたね。



劇的な逆転勝利での戴冠に、歓喜に沸く富山第一の選手達の傍で、
あと一歩のところで叶わなかった夢に涙する星稜の選手達。

勝負事だからしょうがない部分はあるんだけど、
同じピッチの上に描かれるコントラストが残酷だなあって、
トーナメント戦の決勝の表彰式は、いつもそう思う。

来年の選手権決勝の舞台は、埼玉スタジアムだとか。

数々の日本代表の名勝負を生んできたスタジアムが、
どんな選手権のドラマを演出するのか、今から楽しみでならないね。














2014年1月11日

国立最蹴章で北陸ダービー開催のお知らせ



3連休は冷え込みが厳しいって、あれだけニュースキャスターが言うもんだから、
防寒を完璧にして国立に乗り込んだら、まさかのポカポカ陽気。

身構えて損な気にはなったけど、観戦し易い気候になって、
結果オーライとしときますか。



第一試合は、富山第一vs四日市中央工業


準々決勝で日章学園を4-0で降した勢いをそのままに、
富山第一が序盤から攻勢に出たけど、
四中工も勇気を持って高いDFラインを保って、
富山第一の裏への飛び出しに対し、上手くオフサイドの網に掛けてたね。

ただ、この日も富山第一のコンパクトな2ラインが機能し、
中盤で尽くパスカットしていたので、
四中工はなかなかボールをゴール前に運ぶことができず、
苦し紛れのミドルシュートぐらいでしかゴールを脅かすことができなかった。

そして、前半22分にセットプレーから富山第一が先制したわけやけど、
ここまでの試合展開を考えると必然の流れやったね。

その後も、富山第一のペースで試合が進んだけど、
その流れを四中工へ一気に引き戻したのは、前半終了間際の15番のFKだった。

左足で直接狙うには難しい角度やったけど、壁の上から巻いて落とし、
見事にファーサイドのサイドネットへ突き刺した、見事なFKだったね。



前半のうちに同点に追いついた四中工は、勢いをそのままに、
後半の勝ち越しを狙って前に出たけど、
勝ち越しゴールを奪ったのは富山第一の方やった。

中盤でボールを受けた富山第一の3番が、
ペナルティエリア前まで1人で持ち込みシュート。

DFにディフレクトしてこぼれてきたボールを受けた8番が、
シュートモーションに入ってからコースを変える技ありのシュートで、
GKの裏をかいて、見事にゴールネットを揺らしてみせたね。

ただ、勝ち越しに成功したものの、
後半になって富山第一の2ラインが間延びして、中盤にスペースができていたので、
四中工にもチャンスは多く、まだ得点が動きそうな気配はプンプンしてた。

その気配通り、後半28分に縦パス1本でDFラインの裏へ抜けだした、
四中工の17番がペナルティエリア左でのGKとの1on1を制し、
またしても試合を振り出しに戻したね。

ここから四中工は逆転を狙い、富山第一のゴールに攻め込むも、
富山第一のDF陣の体を張った守りにゴールを奪えず、試合はPK戦へ。



「PKはくじ引きみたいなもの」とはいうけど、
この時点で精神的に優位に立っていたのは、
全国大会のPK戦で負けた事が無い四中工の方だったと思う。

ただ、そんな四中工の不敗神話を打ち砕いたのは、
後半終了間際に投入された、背番号12をつけたPK専用のGKだった。

PKに備えてGKを代えるのは、選手権で何回か見たことあるけど、
あんまり上手くいったのを見たことが無い。

それに、この富山第一のGKは、
投入された後、パントキックを盛大に失敗していたので、
「大丈夫かよ」って思ったんやけど、そんな心配は杞憂やった。

四中工の3人目のキッカーのシュートを見事にストップし、
県勢初の決勝進出の立役者になったね。

初の公式戦出場でこれだけの大仕事をやった12番は、
今頃、有頂天やろうな。

一方、四中工は、得意のPK戦で敗れる事になってしまったけど、
言い方を変えれば、今大会のチームは、準優勝をした一昨年のチームと比べて、
80分か90分の試合の中で勝ち切る強さが無かったかなと思う。

一昨年のチームには浅野や國吉といった個の力に長けた選手がいたけど、
今大会のチームは小粒感が否めなかったしね。

ただ、あの1年生の森が、今後どこまで伸びるかが楽しみではあるけども。



そして第二試合は星稜vs京都橘。


第一試合がPK戦までもつれこんだ影響で、
14時20分開始の試合まで準備時間が少なく、
バックスタンドの応援席の客の入れ替えが終わらないうちに試合が始まり、
スタジアム全体が、どことなく落ち着かない感じだった。

そんなスタジアムの雰囲気がピッチにいる選手にも伝播したのか、
前半3分に、なんでもないようなロングボール一発で星稜があっさりと先制。

早々に、ビハインドを背負う事になった京都橘は、得意の攻撃パターンである、
奪ったボールをシンプルに前線の小屋松と宮吉弟へ当てるという攻撃パターンで、
星稜のゴールを目指すも、3-5-2で中央を厚くしてきた星稜の前に、
なかなか攻撃で良い形を作れなかった。

小屋松に関しては、星稜の中盤のアンカーを務めた18番平田に完全に消されてしまい、
90分間でほとんど見せ場を作ることができなかったね。

去年の選手権の時も、京都橘は、
中央を3ボランチ気味に固めてきた、鵬翔に手を焼いていたから、
サイドから崩す攻撃パターンが欲しいところやねんよね。



星稜1点リードで前半を折り返し、迎えた後半。

次の1点を奪ったのも星稜やったね。

右サイドから抜けてきたクロスを星稜の10番がコントロールしたところを、
京都橘の2番が倒し、PKを獲得。

これを星稜の10番が自ら決めて、リードを2点に広げたわけやけど、
ちょっとあれがPKっていうのは厳しかったんじゃないだろうか。

2点ビハインドを背負ったことで、後が無い京都橘は、
前掛かりに出て星稜のゴールを脅かすも、チャンスは多く作れど、
星稜DF陣の体を張ったディフェンスや、
GKの好セーブに遭い、なかなかゴールを割ることができなかった。

逆に、星稜は訪れたチャンスを確実にモノにし、
3点目、4点目と、着実に得点を積み重ねていっていたね。



試合が終わってみれば、4-0という大差がついた試合になったけど、
両校の間にスコアほどの差は無かったと思う。

この大勝の要因は河崎監督の京都橘対策が、
見事にハマったからだと言えるんじゃないだろうか。

ただ、その京都橘対策の立役者となった平田が、
累積警告で決勝戦が出場停止となってしまうのは、なんとも残念なこと。

そういや、第一試合を戦った四中工が、一昨年の選手権で決勝に進んだ時も、
中盤の要だった國吉を累積警告で欠いていたんよね。

W杯ですら、決勝トーナメントに進出した時点で、
グループステージでの累積警告はクリアされるっていうルールがあるんやし、
高校サッカーでも、準決勝に勝ち進んだ時点で、
累積警告をクリアするっていうルールはあってもいいんじゃないかと思う。

まあ、平田は2年やから、来年まだチャンスはあるけど、
選手権の決勝のピッチに立つのを夢見て頑張っている高校生は、
全国にたくさんいるのに、その夢を杓子定規なルールで奪うなんて、
あまりにも無粋じゃないだろうか。



決勝のカードは富山第一vs星稜の北陸勢同士の対戦。

河崎監督が「地味なカードですいません」とか言っていたけど、
両校とも決勝戦に相応しい試合をしてきたチームだと思う。

国立最蹴章を飾るに相応しい、好ゲームを期待したいね。














2014年1月5日

新年のご挨拶は高校サッカー選手権の会場から



あけましておめでとうございます。

相変わらず拙い文章ではありますが、
本年も弊ブログをよろしくお願いします。

この年末年始は、社会人になって5年目にして、
初めて地元の大阪で過ごしてました。

これまでの年末年始は、仕事が入ったり、
ガンバが天皇杯決勝まで勝ち進んだりした影響で、横浜の自宅で過ごしてたからね。

今回は、仕事が休みな上、ガンバも天皇杯で早々と敗退したので、
幸か不幸か、久々に地元で年末年始を過ごすことにしたわけやねんけど、
いかんせんやることが無くて、超ヒマ。

盆と暮れになると、毎回、地元に帰って行く同僚たちは、
一体、地元で何をして過ごしてるんだろうってふと思ってしまったわ。

そんな、ヒマを持て余していた俺の目に留まったのが、
高校サッカー選手権初出場にしてベスト8まで勝ち進んだ、履正社の戦いぶり。

これは、関東に戻ったら1回見に行っとかないとなと思ったので、
思い立ったらすぐに行動、浦和の駒場スタジアムに足を運んできました。



履正社は第二試合だったので、14時10分キックオフ。

高校サッカー選手権の試合のチケットは、1枚で2試合観れるものなので、
第一試合の日章学園vs富山第一から観戦しました。


両校とも初めて見るチームだったので、
どういうサッカーをするのか知らなかったんやけど、
富山第一が予想以上に良いサッカーをするチームだったので、驚かされた。

コンパクトな4-4の2ラインが、日章学園のパス回しをことごとくシャットアウトすれば、
アバウトに前に蹴りだしたボールでも、
キープ力に長ける9番と10番がきっちりと収めて、前で時間を作るから、
2列目、3列目の選手が思い切ってオーバーラップを仕掛けていた。

前から行くところは行く、下がってブロックを作るところは素早く帰陣する等、
チーム全体がイメージを共有して動いているあたり、
とてもオーガナイズされたチームだなっていう印象を受けたね。

日章学園としては、ロングボールを使って、
富山第一のDFラインを押し下げて、全体を間延びさせたかったところやけど、
あんまりそういうサッカーはやりたくないのか、
3点ビハインドになるまでロングボール主体の攻撃はしなかった。

まあ、3点ビハインドになってから使い出したロングボールは、
苦し紛れのパワープレーという感が否めなかったけども。

ただ、先制点を奪われるまでは、互角と言ってもいい試合をしていたので、
あの、富山第一の25番のスーパーミドルで富山第一に傾いた試合の流れを、
最後まで取り戻せなかった感じかな。


そして、第二試合の履正社vs四中工

ここまで初出場ながら、ベスト8まで勝ち進んだ履正社やったけど、
3回戦の青森山田戦はPK戦の末、勝利したものの、押し込まれる時間が長かったし、
今回対戦する四中工は、一昨年の選手権の準優勝校やから、
相当、厳しい試合を強いられるやろなっていう、試合前の見解やった。

ところが、蓋を開けてみると、
中盤でボールを支配し、SBのオーバーラップを絡めながら、
何度もサイドを崩してチャンスを演出していた。

ただ、チャンスは作るものの、なかなかゴールを決める事ができなくて、
こういう時って往々にしてカウンター一発でやられるんよなって思ってたら、
後半22分にロングスローを起点としたゴール前の混戦を制し、
10番がゴールを決めて履正社が先制。

履正社の2番のロングスローは、ポゼッションサッカーを志向する履正社において、
良い攻撃のアクセントになっていたね。

これは、初出場での国立進出あるかと思ったけど、現実はそう甘くなく、
後半ロスタイムにパワープレーから失点し、同点に追いつかれると、
PK戦の末に敗れてしまった。

同点に追いつかれた場面は、GK安川のファンブルが原因だったから、
得意のPK戦でそのミスを帳消しにしたかっただろうに、
今頃、その心中は穏やかじゃないやろうね。

四中工の4人目のキッカーに決められたら敗北というところから、
2人続けてPKをストップし、履正社に流れを持ってきたかに思ったんやけど、
全国大会でPK戦無敗の四中工のPK戦の強さは本物やね。

大阪代表が負けたのは残念やったけど、
選手権前に市立船橋と対戦して0-6で負けたチームが、
選手権での戦いを経るごとに成長していく姿は、胸を熱くさせるものがあったね。



なんか、大阪に住んでいた頃は、さほど高校サッカーに興味無かったんやけど、
こっちに住むようになってから、年々、選手権の魅力に惹かれている自分がいる。

土曜日の準決勝も、もちろん国立に見に行く予定です。