2018年7月16日

トリコロールの旗が揺れたモスクワの夜



フランス42クロアチア


フランスについてよく語られるところは、
個の力には長けるけど、チームとしてのまとまりに欠けるというもの。

ただ、ディディエ・デシャンが率いる今回のチームの内部からは、
そういった類の雑音が聞こえてこなかった。

自国開催の98年大会のW杯で、
金色のトロフィーを空に掲げた主将の人心掌握術は監督としても発揮され、
突出した個の力はチームに還元されていた。

また、この試合のデシャンは、カンテをエンゾンジと交代させるという、
一見、悪手にも見える采配をしたけど、結果的にこれを的中させ、
モチベーターとしてだけではなく、戦術家としても非凡なものを発揮した。

ボールは奪うけどもそこからの展開でミスが目立ったカンテに代わり、
エンゾンジがカウンターの起点として機能し、
フランスに試合の大勢を決める2つのゴールがもたらすことになったからね。

セットプレーで確実に得点を積み重ね、堅牢な守備で守り切るという戦い方は、
面白みに欠けるところはあったけど、
今大会のフランスはとても堅実で強いチームだったと思う。



ただ、この試合に関しては、
クロアチアを贔屓目に見ていた人が多かったんじゃないだろうか。

正直、僕はクロアチアが決勝まで勝ち上がってくるとは思ってなかったんだけど、
レアルマドリードとバルセロナのエンジンを搭載したチームが弱いはずがないんだよね。

グループステージでアルゼンチン相手に快勝して勢いに乗ると、
決勝トーナメントでは常に先制点を許す苦しい試合を強いられながらも、
追いつき、追い越し、延長戦とPK戦も含めながらしぶとく勝ち上がってきた戦いぶりは、
胸が打たれるものがあった。

また、グループリーグでは、主将のモドリッチに牽引されていたチームが、
決勝トーナメントに入ると、
チーム全員でモドリッチを支えるような戦いを見せていたことに、
青春ドラマの1ページを見たような気がしたね。

結果的に、この試合ではフランスに敗れて初優勝はならなかったけど、
前半の2つの不運な失点がクロアチアにとって不利に働いただけで、
両国の間にそこまで差は無かったように思う。

「記憶に残るのは勝者」という言葉があるけど、
少なくとも僕も含め、この試合でクロアチアを贔屓目に見ていた人は、
今大会のクロアチアの勇敢な戦いぶりを忘れることは無いだろうね。



今大会は、我らが日本が戦前の下馬評を覆してベスト16入りを果たし、
ドイツ、スペイン、アルゼンチンなどの強豪が早々と姿を消すなど、
波乱含みでとても見応えがある大会だった。

また、今大会から導入されたVARと延長に入ってからの4人目の交代枠は、
W杯という大会に新しい流れを生み出したと思う。

特にVARは検証に時間が掛かるというネックはあるものの、
後々、しこりが残りそうな曖昧なジャッジを無くすという意味で、
その役割を果たすことが出来たんじゃないだろうか。

次回のカタールW杯は、冬の開催が予定されているので、
また新しい流れが生み出されそうな感じがするけど、
岡田武史が言っていたように4年って長いからね。

我々サポーターは目先のサッカーカレンダーに一喜一憂しながら、
遠い目で4年後の中東のピッチに思いを馳せる感じでいきましょう。















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